Build 2014 で Windows 8.1 Update のリリースが公表され、それと共に Internet Explorer 11 も更新される事になりました。Windows 8.1 Update では色々な変更点がありますが、Internet Explorer 11 での大きな変更点は、「エンタープライズ モード」 (Enterprise Mode) の追加でしょう。またこの変更はダウンレベル (Windows 7 / Windows Server 2012) 用の IE11 にも更新プログラムとして提供される予定です。
では、この「エンタープライズ モード」とはどのような物でしょうか。詳しい解説は Internet Explorer ブログ (日本語版) の「Internet Explorer 11 向けエンタープライズ モードを利用して最新の状態を保持する」およびこの記事からもリンクがある TechNet の「What is Enterprise Mode?」に書かれていますが、ざっくり言うと『あらかじめ作成したリストに含まれるサイトやユーザーが指定したサイトを Internet Explorer 8 のエミュレーション モードで表示/動作させる機能』です。この機能により、Internet Explorer の最新の機能に対応していない Web サイトを適切に表示/動作させる事が可能になります。
同じような互換機能として「互換表示」がありますが、互換表示では IE7 モードで表示/動作が行われます
またエンタープライズ モードの特徴として、企業内での一括管理を意識した機能が用意されている点が挙げられます。エンタープライズ モードでは前述のように、以下の二つの方法で指定した Web サイトを IE8 互換モードで表示します。
- 管理者があらかじめ作成した Web サイトのリスト
- ユーザーの選択
企業の IT 管理者がどのサイトを IE8 モードで表示させるべきかあらかじめ調査し、その結果を元にリストを作成して組織内のクライアントに自動で配布し、それに従って IE11 を動作させる事ができます。またエンタープライズ モードで表示させるサイトをユーザーが指定できるようにした場合も、そのユーザーの指定 (指定のオン/オフ) を管理者が設置したサーバーに自動的に送信させて、ユーザーの指定情報を収集する事が可能になっています。このように企業内/組織内で IE8 互換の表示を集中管理できるようになっているのが、エンタープライズ モードの従来の「互換表示」機能との大きな違いです。
ただし「互換表示」機能は (グループ ポリシーなどで明示的に禁止しない限り) ユーザーが自身で任意に互換表示するサイトを指定できたのに対して、エンタープライズ モードでは (原則として) グループ ポリシーを通じて管理者がエンタープライズ モードの利用を許可しないと、IE8 互換モードでの表示が行えないという違いもあります。
Windows XP で利用できる最も新しい IE のバージョンが IE8 であった事も影響して、企業内のイントラネット サイトやエクストラネット サイトでは IE8 をターゲットに開発されたシステムが少なからず存在していると考えられます。これらのサイトは「互換表示」機能の IE7 エミュレーションでも、最新の Edge モードでも正しく動作しない場合があり、Windows 8 / 8.1 への移行の障害となっていたケースもあるでしょう。エンタープライズ モードはこうした問題を解消するための機能です。
将来的には Web 標準に準拠した、他のブラウザーとも相互運用性のあるシステムに移行する事が望ましいのでしょうが、現時点で最新のモダン ブラウザーでは利用できないシステムを延命させ、標準準拠のシステムに移行する時間的余裕を獲得する手段として、エンタープライズ モードを活用すると良いのでしょう。
エンタープライズ モードの利用方法
詳細情報は「What is Enterprise Mode?」の「Resources」に示されている各ページを参照してください。ここでは要約して説明します。
エンタープライズ モードを有効にするには、IE8 互換表示するサイトの指定方法に応じて以下のいずれか、または両方のグループ ポリシーを構成します。
- ユーザーにエンタープライズ モードを利用するサイトを指定させる場合
[コンピューターの構成] または [ユーザーの構成]
– [管理用テンプレート]
– [Windows コンポーネント]
– [Internet Explorer]
– [[ツール] メニューからエンタープライズ モードを有効にして使用できるようにする] - 管理者が作成したサイト一覧を使用する場合
[コンピューターの構成] または [ユーザーの構成]
– [管理用テンプレート]
– [Windows コンポーネント]
– [Internet Explorer]
– [エンタープライズ モード IE の Web サイト一覧を使用する]
[エンタープライズ モード IE の Web サイト一覧を使用する] を構成する場合
構成を [有効] にした上で、Web サイト一覧リストの場所 (URL) を指定します。
ここで指定するリストは単純な XML データと説明されています。その詳細な仕様は「Add multiple sites to the Enterprise Mode site list using a file and Enterprise Mode Site List Manager」の「Create an Enterprise Mode site list (XML) file」セクションに解説されています。ただしこのリストを簡単に作成できるツール「Enterprise Mode Site List Manager」(EMSLM) が間もなく提供される予定 (ダウンロード センターで公開されるようです) です。作成したファイルは上記の [エンタープライズ モード IE の Web サイト一覧の場所 (URL)] で指定した URL で公開します。
[エンタープライズ モード IE の Web サイト一覧を使用する] ポリシーが有効である場合、Internet Explorer 11 は起動の約65秒後に [エンタープライズ モード IE の Web サイト一覧の場所 (URL)] で指定された場所からファイルを取得します。取得したリストと、現在利用中のリストのバージョン (XML データとして記載されています) を比較し、新しいリストである事が確認されると、ダウンロードしたリストが読み込まれ、新しいリストに基づいてエンタープライズ モードでの表示が行われます。
[[ツール] メニューからエンタープライズ モードを有効にして使用できるようにする] を構成する場合
構成を [有効] にした上で、必要に応じて [ユーザーがエンタープライズ モードを有効にして使用した場合に、その対象となった Web サイトに関するレポートを受信する場所 (URL)] を指定します。(URL の指定はオプションです。指定しなくても構いません)
このポリシーが [有効] に構成されると、Internet Explorer 11 の [ツール] メニューに [エンタープライズ モード] という項目が追加されます。
※メニュー バーの [ツール] メニューです。[ツール] ボタン (歯車) ではありません。
ユーザーは正しく表示されなかったページでこの項目を選択する事で、ページをエンタープライズ モード (IE8 互換表示) で表示させる事ができます。ここでの選択は (互換表示機能の場合と同じように) 記憶され、次にそのページを表示した際には最初からエンタープライズ モードで表示できます。またエンタープライズ モードで表示されているページで同じメニュー項目を選択してチェックを外すと、エンタープライズ モードでの指定は解除されます。
このような操作でユーザーがエンタープライズ モードの指定のオン/オフを行った際、[ユーザーがエンタープライズ モードを有効にして使用した場合に、その対象となった Web サイトに関するレポートを受信する場所 (URL)] が設定されていれば、Internet Explorer はその URL に、ユーザーが指定した操作とそのページのアドレスを POST メソッドを使って送信します。その POST データをサーバーで処理/蓄積する事で、管理者はユーザーがどのようなサイトで互換性の問題に直面したのか、またどのようなサイトを一元管理リストに追加すべきかを確認できます。
レジストリで構成する場合
グループ ポリシーが利用できないエディションの Windows を使用しているユーザーがどうしてもエンタープライズ モードを利用したい場合は、レジストリを構成する事でエンタープライズ モードを有効にできます。構成するキーと値は以下の通りです。
- キー
HKEY_LOCAL_MACHINE または HKEY_CURRENT_USER
SOFTWARE\Policies\Microsoft\Internet Explorer\Main\EnterpriseMode - 名前とデータ
[[ツール] メニューからエンタープライズ モードを有効にして使用できるようにする] 場合
名前 : Enable, データ : “” | {URL:port}
ex. 名前 : Enable, データ : “” (空)
ex. 名前 : Enable, データ : http://localhost:13000
[エンタープライズ モード IE の Web サイト一覧を使用する] 場合
名前 : SiteList , データ : {File or URL}
ex. 名前 : SiteList, データ : http://localhost:8080/sites.xml
レジストリを直接編集する場合は、事前に適切なバックアップを取り、間違いがないように慎重に操作してください。
4/9 追記 : レジストリの指定方法が逆になっていたのを訂正しました
4/9 追記 : Enterprise Mode Site List Manager (EMSLM) が公開されています http://www.microsoft.com/ja-jp/download/details.aspx?id=42501
カテゴリー:Internet Explorer
